音楽を薬代わりに〜エーリッヒ=クライバー編1

エーリッヒ=クライバーは20世紀を代表する音楽家の一人で、カルロス=クライバーのお父さまです。ベートーベン、モーツアルト、ワーグナー、リヒャルトシュトラウスの演奏では高評価を得ていました。

わたしに限ってですが・・カルロスを知らなければ、エーリッヒのことも全く知らなかったでしょうし、興味も持たなかったと思います。拝聴して、正統派の極みをいく方であったのだと思いました。

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エーリッヒ=クライバー 経歴

1890年生〜1956年没 ちょうどわたしが生まれた年に亡くなっているのです。

  • オーストリア=ハンガリー帝国のウィーンで生まれ、ウィーン大学では哲学や音楽学も学びつつ、本格的な音楽教育を受けました。
  • 初期のキャリア:チェコやドイツの地方歌劇場でキャリアを積んだ後、1923年にベルリン国立歌劇場の音楽監督に就任。この時期に彼の名声は確立されます。
  • 現代音楽への支持:1925年、アルバン・ベルクの《ヴォツェック》を世界初演し、前衛音楽への理解と推進者としても知られました。これは当時としては非常に革新的な取り組みでした。

1930年代にはナチスが台頭してきたことにより、ヨーロッパを去り、アルゼンチンに渡ります。

戦後は再びヨーロッパに戻り、ウィーン・フィルやベルリン・フィルなどを指揮。BBC交響楽団などとも共演しましたが、ナチス時代の名残や新たな政治的対立には依然として距離を取り続けました。

カルロス=クライバーとの違い

ある音楽評論家がカルロスは親の表現を模倣しただけではないか?と書いておられました。わたしの耳では、テンポ感などは似た部分もありますが、縦の線や抑揚については大きく違うように思います。親子であるから、参考にした部分はあると思いますが、全く別モノ。違う個性だとわたしの耳は判断しております。

カルロスは音楽を始めたのが遅かったので、ピアノも下手だったそうですよ。ですから、縦の線(和声の響かせ方)などはお父さまに比べると、鳴らし方が違っていたかもしれません。そのへんは指揮の専門的なことなので、わたしにはよくわかりませんが・エーリッヒの演奏を聴いていると、どんなに小さな曲であっても、和声の重厚さが耳につきます。

カルロスの演奏にはそのような印象をあまり受けませんでした。彼の演奏はルバートや譜面に書かれていない部分を、親とは違うアプローチで演奏しているように思いました。横の流れが目立ちます。横の流れといえば、ワーグナーなんですけど、線の絡み具合がはっきり聞こえる。

エーリッヒの演奏は絡み具合だけではなく、声部の一つ一つを大切にされており、楽譜がなくてもよくわかる演奏なんです。このような演奏にはあまり当たったことがありません。どこか違和感のある演奏ではなくて、わたしには安心感のある気持ちに寄り添ってくれる演奏で、まさに心の安定剤となってくれているんですね。

わたしは作品にしても、演奏家にしても、周囲の噂や人気、他人の評価には左右されないで聴く質です。人がこのように書いていたからこうだろうとは思わず、自分の耳が頼りです。ですからこの記事をたまたま目にされた方にとっては、音楽雑誌の記事とは違っていると、違和感を感じられるかもしれませんね。

おすすめの曲

美しき青きドナウ・ベートーベン「合唱」リハーサル

掛け値なしの良い演奏だと思います。パートの一つ一つが際立っており、独自性のある演奏です。また縦の線が際立っており、薄っぺらさがありません。シュトラウスは、単なる情景描写的な曲ではなく、細部まで練りこまれているのだと、紹介されているようにも思えます。

この曲はわたしの嫌いな1曲でしたが、初めて良いと思えました。大きな収穫です。

次は大曲。ベートーベンのシンフォニー3番。聴き慣れた曲ですが、エーリッヒの解釈はだいぶ違うように思いました。わかる人にはわかる。特に創作をやっている者には、ハッとさせられる部分があります。他に6番の田園も拝聴しました。しかしわたしには、3番のほうが趣味にあいます。

曲中にモティーフの受け渡しの部分がよくあるのですが、最初はモティーフの裏側にある和声を表に出し、次にモティーフの表側(メロディ)を出してくれたりします。メロディ→和声ではないところが好きです。このような部分が一箇所ではなく、あちこちにあります。

美しき青きドナウでも似たようなことをされています。同じ素材でも料理の仕方を変えて、楽しませるといった感じです。目で見て楽しませるというより、ダシのような目に見えない部分に工夫をこらして、おいしさを演出。一回きりじゃなくて何度も、しかも違うメニューも聴きたくなるようにとの、サービス精神も感じました。

この精神が父と子とではだいぶ違っていたようです。カルロスのサービス精神は大衆にグッと手を差し伸べて、アプローチされていた。別の言葉だと庶民的?かも。でもそこまでいくには、音楽の知識、勉強に相当な時間を当てておられたのでしょう。

田園はカルロスのCDもありますが、エーリッヒとは全く違います。お父さまのほうが、何十倍も良し。

書いていて楽しくなってきました。体調悪くても好きなことは楽しめるんです。音楽を薬代わりにとは、聴くだけではなく、書くことも含められるかな?と思いました。

今後もごはんをおいしくいただくのと同じ感覚で、書いていきたくなっています。乞うご期待。

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